2026年8月19日、フードデリバリーサービス「menu」が2026年9月30日でサービスを終了すると発表しました。運営会社のmenu株式会社も、その後解散・清算される予定です。
しかし、2026年に日本市場から姿を消すフードデリバリーサービスはmenuだけではありません。その約半年前。2026年3月4日にはWoltも日本でのサービスを終了しています。
わずか約7か月の間に、Wolt、そしてmenuという知名度の高いフードデリバリーサービスが相次いで日本市場から姿を消すことになります。
では、日本ではフードデリバリーそのものが利用されなくなっているのでしょうか。実はそうではありません。2025年の日本のデリバリー市場規模は、8,240億円。コロナ前の2019年と比較すると、97%増。ほぼ2倍の市場規模です。
市場は大きい。利用者もいる。それなのにサービスは撤退していく。一方では、2025年に参入したRocket Now(ロケットナウ)が猛烈な勢いで全国へ拡大しています。Uber Eatsは日本で3年連続黒字を公表。出前館も「お店価格」や送料無料など、大規模な施策を展開しています。
つまり現在の日本では、「フードデリバリーが終わっている」のではなく、「フードデリバリー業界の勝者と敗者が急速に分かれ始めている」可能性があります。
しかも、この淘汰は今回が初めてではありません。foodpanda。DiDi Food。DoorDashブランド。Wolt。そしてmenu。日本のフードデリバリー市場では、これまで何度も参入と撤退、統合が繰り返されてきました。
この記事では過去まで遡りながら、なぜ日本のフードデリバリー市場ではこれほど撤退・再編が繰り返されるのか。そして2026年8月現在、業界で何が起きているのかを徹底的に分析します。
※menuサービス終了そのものについては、こちらの記事で詳しくまとめています。
→【関連記事】menuが2026年9月30日でサービス終了へ|撤退理由・配達員・利用者への影響を徹底解説
まず結論:日本のフードデリバリーは「衰退」より「寡占化」が進んでいる
現在の状況を一言で表すなら、市場縮小というより、市場再編です。
日本のデリバリー市場には現在も8,000億円を超える需要があります。ところが、その巨大市場で事業を続けるために必要な、ユーザー数・加盟店数・配達員数・注文密度・価格競争力・広告投資・システム・物流への投資が、以前よりはるかに大きくなっています。
その結果、「ある程度利用されているサービス」では生き残れず、上位サービスへ注文が集中する構造になりつつあると考えられます。2026年のWoltとmenuの撤退は、その変化を象徴する出来事です。
2026年3月、まずWoltが日本市場から撤退した
2026年2月25日。Woltは日本でのサービスを終了すると発表しました。そして、2026年3月4日をもって日本でのサービスを終了。
Woltは2020年3月に広島から日本展開を開始し、その後全国へエリアを拡大してきたサービスです。青いバッグを背負った配達員を街中で見たことがある人も多いでしょう。そのWoltが、約6年間の日本展開に幕を下ろしました。
Woltの撤退理由が非常に重要
Woltの親会社であるDoorDashは、日本だけを突然切り捨てたわけではありません。2026年2月25日、DoorDashは、日本・シンガポール・カタール・ウズベキスタンの4か国から撤退すると発表しました。
そして、その理由について非常に重要な表現を使っています。DoorDashは、国ごとの状況を数か月にわたり検討した結果、「持続可能な規模と長期的なリーダーシップへの道筋が最も明確な地域へ投資を集中する」という趣旨を説明しています。
これを逆から考えると、日本市場では、DoorDashが求める規模や長期的優位性を実現する道筋が十分に明確ではなかったと見ることができます。
ここで出てくるキーワードが、「規模」
です。この言葉は後ほど非常に重要になります。
そして約半年後、今度はmenuが撤退
2026年8月19日。今度はKDDIが、menuを2026年9月30日で終了すると発表しました。しかもサービスだけを閉じるのではありません。運営会社のmenu株式会社も解散・清算する予定です。
menuは一時期、全国47都道府県・加盟店8万7,000店まで拡大。さらにKDDIが出資し、「国内市場トップのデリバリーサービス」を目標に掲げていました。それでも撤退です。
Woltとmenuの撤退理由には共通点がある
ここが非常に興味深いところです。Wolt/DoorDashは、持続可能な規模と長期的な優位性を実現できる地域へ投資を集中するという趣旨を説明しました。
一方、KDDIはmenu終了について、「フードデリバリー市場を取り巻く競争環境の変化」、「今後の事業見通し」を検討し、「経営資源の最適配分」の観点から終了すると説明しています。
表現は違います。しかし、どちらにも共通しているのが、「限られた経営資源をどこへ投資するのか」
という判断です。
単純に、「注文がゼロになった」から撤退したわけではありません。事業を続けることはできても、今後さらに巨額の資金・人材を投入して競争を続けるだけの合理性があるのかという判断だったと考えられます。
menuがなぜ撤退に至ったのかについては、別の記事で市場データから詳しく分析しています。
→【関連記事】menuはなぜ撤退したのか?市場規模8,240億円でも生き残れなかった理由を徹底分析
実は日本のフードデリバリー撤退ラッシュは2026年が初めてではない
ここで少し時計を巻き戻してみます。日本ではコロナ禍をきっかけに、国内外から多くのフードデリバリーサービスが参入しました。ところが、その後かなりのサービスが撤退・統合されています。
代表的なものを時系列で見ると、業界の特殊さがよく分かります。
| 時期 | サービス | 日本での主な動き |
|---|---|---|
| 2021年6月 | dデリバリー | サービス終了 |
| 2022年1月 | foodpanda | 日本市場から撤退 |
| 2022年5月 | DiDi Food | 日本のフードデリバリー事業終了 |
| 2022年8月 | DoorDash | 日本のDoorDashブランドを終了しWoltへ統合 |
| 2026年3月 | Wolt | 日本市場から撤退 |
| 2026年9月予定 | menu | サービス終了、運営会社も解散・清算 |
ここで注意したいのがDoorDashです。DoorDashは2022年に単純に日本事業を捨てたわけではありません。DoorDashがWoltを買収したため、日本国内では両ブランドを併存させず、DoorDash → Woltへ一本化しました。
つまりこれは「完全撤退」というより、ブランド統合・再編です。ところが、そのWolt自体が2026年3月に日本市場から撤退しました。結果として、DoorDashグループのフードデリバリーサービスは日本市場から姿を消すことになりました。
foodpandaはわずか約1年半で日本撤退
過去の撤退を見ると、現在との共通点がさらに見えてきます。foodpandaは2020年9月に日本へ参入しました。しかし2021年12月には撤退方針が発表され、2022年1月末に日本市場から撤退。参入からわずか約1年半でした。
当時、運営元のDelivery Heroは撤退理由として、日本市場における競合環境の大きな変化、そして配達員を安定して確保することの難しさなどを挙げています。さらにグループ内の別の成長分野へ投資を集中する判断もありました。
なんだか2026年のWoltやmenuと似ていると思いませんか。競争環境。配達員。投資先の選択。4年以上前から、同じ問題が繰り返されています。
DiDi Foodも2022年に撤退
DiDi Foodは2020年、大阪から日本でのフードデリバリー事業をスタートしました。その後、大阪・福岡・兵庫・広島・京都・愛知・沖縄・宮城・奈良などへエリアを拡大。しかし2022年4月に撤退を発表し、2022年5月25日で日本におけるフードデリバリーサービスを終了しました。
DiDi側は、「日本市場の変化を受け、今後の事業継続を検討した結果」サービス終了を決めたと説明しています。そしてDiDiは日本でフードデリバリーを続けるのではなく、タクシー配車サービスへ集中しました。
これも、経営資源をより勝てる事業へ集中するという判断です。
ここまで撤退が続いても、市場そのものは消えていない
ここまで読むと、「やっぱり日本ではフードデリバリーが定着しなかったのでは?」と思うかもしれません。ところが数字を見ると違います。
サカーナ・ジャパン(Circana Japan)の調査では、2025年のデリバリー市場規模は、
8,240億円
の見込み。前年比では、2.0%増。そしてコロナ前の2019年と比較すると、
97.0%増
です。つまり約2倍。確かにコロナ禍の急成長期ほどの勢いではありません。しかし、フードデリバリーがコロナと一緒に消えたわけではないことは明らかです。ここが日本のフードデリバリー業界を見るうえで最も面白いところです。
「市場が成長している」と「企業が儲かる」は別の話
8,240億円もの市場があるなら、「みんな儲かりそう」と思います。しかし市場規模と事業者の収益性は別問題です。
フードデリバリーには、ユーザー・加盟店・配達員という3者が必要です。ユーザーだけ集めても配達員がいなければ料理は届きません。配達員だけ集めても注文がなければ仕事になりません。ユーザーと配達員がいても加盟店が少なければ魅力的なサービスになりません。
つまり、
3者を同じ地域・同じ時間に高密度で集める必要がある
ビジネスなのです。これがフードデリバリーの難しさです。
最大の壁は「注文密度」
例えば、ある街で1時間に100件の注文があるサービスと、10件しかないサービスを考えてみます。100件あるサービスなら、配達員が店へ向かう → 商品を届ける → 届けた場所の近くで次の注文を受ける、という効率的な動きを作りやすくなります。
しかし注文が少ないサービスでは、配達終了 → 次の注文がない → 待機 → 配達員が別アプリを開く、となります。配達員は基本的に、「注文が鳴るアプリ」を優先します。
すると注文の少ないサービスは、配達員を確保するために高い報酬やインセンティブを用意する必要があります。それにはお金がかかります。
規模が大きいサービスほど、さらに大きくなりやすい
逆に注文密度の高いサービスでは、
- 注文が多い
- 配達員が集まる
- 配達が成立しやすい
- ユーザーが使いやすい
- 加盟店にも注文が入る
- 加盟店が増える
- さらにユーザーが増える
- 注文がさらに増える
という循環を作ることができます。これがフードデリバリーにおける、ネットワーク効果です。
だからこそDoorDashがWolt撤退時に使った、「持続可能な規模」という言葉が重要なのです。フードデリバリーでは、「そこそこ大きい」では足りない可能性があります。
そして2025年、Rocket Nowが日本へ参入した
そんな市場へ新しく入ってきたのが、
Rocket Now(ロケットナウ)
です。Rocket Nowは2025年1月14日に日本でサービスを開始しました。運営するCP One Japanは、米国NYSE上場のテクノロジー企業Coupangの日本法人です。
最大の特徴は、送料0円・サービス料0円という非常に分かりやすい料金体系です。そして参入後の拡大スピードが非常に速い。
Rocket Nowは約18か月で700万ダウンロード
2026年6月。Rocket Nowは、
累計700万ダウンロード
を突破したと発表しました。日本でのサービス開始から約18か月です。さらに2026年8月7日には、サービスエリアが、
46都道府県・420都市
へ拡大。ほぼ全国規模になりました。
つまり2026年は、Woltとmenuが撤退する一方で、Rocket Nowが猛烈な速度でその空白へ入り込んでいるという非常に面白い状況です。
さらにRocket Nowはローソンとも連携開始
menu撤退発表のわずか5日前となる2026年8月14日。Rocket Nowはローソンとの連携を発表しました。東京・神奈川・千葉の一部ローソン店舗で、店内調理された商品をRocket Nowから注文できるサービスを開始します。
これはかなり象徴的です。menuも2026年3月から、「ローソンデリバリー powered by menu」を展開していました。そのmenuが撤退する一方で、Rocket Nowがローソンとの連携を開始しています。
もちろん両サービスは仕組みや対象店舗などが異なるため、「Rocket Nowがmenuのローソン事業を引き継いだ」という意味ではありません。しかし業界の勢力図が変わっていることを感じさせる動きではあります。
Uber Eatsはすでに「生き残る」から「日常化」へ進んでいる
一方、現在の日本市場で強いポジションにいるのがUber Eatsです。Uber Eats Japanは2026年3月、2023年から2025年まで3年連続黒字を達成したと発表しています。
さらに、加盟店:約12万店舗・配達パートナー:全国約10万人を抱え、2026年1月には過去最高売上を記録したとしています。そして2026年3月20日には全国約1万8,000店舗で、
「お店と同じ価格」
を開始。Uber Oneでも条件を満たす注文について、配達手数料・サービス料を0円にするなど、価格面での競争力を高めています。
Uber Eatsは現在、「デリバリーは特別な日に使う高いサービス」というイメージから、「日常的に使う生活インフラ」へ変えようとしています。
出前館も「お店価格+送料無料」で勝負
国内勢の出前館も大きく動いています。2026年3月1日から、「お店価格で出前館」を全国47都道府県へ展開。同時に送料無料施策も開始しました。
そしてわずか3か月後の6月には、
2万1,000店舗以上
がお店価格の対象に。そのうち1万6,000店舗以上では、全商品を店頭と同じ価格で注文できるとしています。
さらに出前館によると、「お店価格」参加店舗では2026年3月実績で、参加前の2月と比較して、オーダー数が平均2.9倍になったとしています。つまり価格を下げることで、実際に注文量を増やそうとしているわけです。
2026年の競争は「誰が安いか」へ
ここまでを見ると、2026年の大きな変化が見えてきます。以前のフードデリバリーは、商品価格+商品価格への上乗せ+送料+サービス料という形でも利用されていました。
しかし現在は、
- Uber Eats → お店と同じ価格を拡大
- 出前館 → お店価格+送料無料
- Rocket Now → 送料0円・サービス料0円
という競争です。利用者からすれば歓迎すべき変化です。しかしプラットフォーム側からすれば、
「ユーザーから取れるお金を減らしながら競争する」
ことになります。当然、体力のないサービスほど苦しくなります。
だから「3番手・4番手」が苦しくなる
ここでフードデリバリーの構造を考えると、撤退が続く理由が見えてきます。規模が小さいサービスは、
- 注文密度が低い
- 配達員を集めにくい
- インセンティブが必要
- 広告を出してユーザーも集める必要がある
- 加盟店営業にもコストがかかる
- それでも価格では大手と競争しなければならない
という状況になります。
しかも大手側は、店頭価格・送料無料・サービス料無料などを打ち出しています。すると下位サービスは、規模では負ける・価格でも負けられない・配達員も確保しなければならないという非常に厳しい状態になります。
これが、「市場は大きいのに企業が撤退する」理由の一つだと考えられます。
日本市場は「Winner takes most」に近づいているのか
フードデリバリー市場は、Winner takes all——つまり1社だけがすべてを独占する市場になるとは限りません。実際、日本では複数サービスが存在しています。
しかし、
Winner takes most
「上位数社が市場の大部分を取る」構造には近づいている可能性があります。
例えば、1位:巨大な注文密度、2位:十分な注文密度、3位:成長投資によって注文密度を作る、4位以下:十分な注文密度を確保できない、となれば、4位以下ほど事業継続が難しくなります。
つまり、市場規模が大きくても、生き残れる会社の数は少なくなるのです。
2022年の撤退ラッシュと2026年は似ているようで違う
ここは非常に重要です。2022年前後の撤退は、
- コロナ禍で市場が急拡大
- 大量の企業が参入
- 競争激化
- 淘汰
という側面が強くありました。foodpandaやDiDi Foodなどが相次いで姿を消しました。
一方、2026年は少し違います。すでに一度淘汰された市場へ、Rocket Nowという巨大な資金力を持つ新規プレイヤーが参入。そして、Uber Eats・出前館・Rocket Nowが価格競争を激化させる中、Wolt・menuが撤退しました。
つまり2026年は、「第2次再編」
と見ることもできます。
第1次再編と第2次再編
大まかに整理すると、日本のフードデリバリー市場はこんな流れです。
第1段階:コロナ前
Uber Eatsや出前館などが市場を開拓。
第2段階:2020~2021年
コロナ禍で需要が急増。foodpanda・DiDi Food・Wolt・menu・DoorDashなど多数のサービスが競争。
第3段階:2021~2022年
第一次淘汰。dデリバリー終了。foodpanda撤退。DiDi Food撤退。DoorDashブランドをWoltへ統合。
第4段階:2023~2024年
Uber Eats・出前館・menu・Woltなどを中心に市場が安定。
第5段階:2025年~
Rocket Now参入。送料・サービス料無料を武器に急成長。
第6段階:2026年
Wolt撤退。Uber Eats「お店と同じ価格」。出前館「お店価格+送料無料」。Rocket Now全国規模へ。menu撤退。
つまり2026年は、日本フードデリバリー市場の「第二次淘汰・再編」が始まった年と位置付けてもいいのかもしれません。
では、今後残るのは3社なのか?
2026年8月時点で全国規模の主要サービスを見ると、今後特に注目されるのは、Uber Eats・出前館・Rocket Nowです。
menuは9月30日に終了予定。Woltはすでに撤退しました。そのため市場は以前より明らかに集約されています。しかし、「今後この3社で確定」と断定するのは早いでしょう。
なぜなら、出前館は収益性という課題を抱えていますし、Rocket Nowも現在は急拡大フェーズです。Uber Eatsも現在の優位性が永遠に続く保証はありません。さらに将来的に新しいプレイヤーが参入する可能性もあります。
だから重要なのは、現在の順位ではなく、それぞれが持続可能なビジネスモデルを作れるかです。この3社の現在の強みと弱みについては、次の記事で詳しく比較します。
→【次の記事】Uber Eats・出前館・Rocket Now、最後に生き残るのは?menu撤退後の勢力図を分析
配達員にとって「サービスが減る」ことは良いことなのか?
業界再編は配達員にも大きく関係します。競合サービスが多ければ、各社が配達員を確保するために、高い報酬・クエスト・ブースト・紹介キャンペーンなどを競う可能性があります。
一方、サービスが少なくなれば配達員の選択肢も減ります。Woltがなくなり、menuもなくなる。すると配達員の稼働先は、Uber Eats・出前館・Rocket Nowなどへ集中します。競争するプラットフォームが減れば、長期的には配達員獲得競争にも影響する可能性があります。
ただし、逆に残ったサービスへ注文も集中するため、「サービスが減る=配達員に悪い」と単純には言えません。この問題については、配達員目線に絞って別記事で詳しく分析しています。
→【関連記事】menu撤退で配達員はどうなる?Uber Eats・出前館・Rocket Nowへの影響を徹底分析
加盟店にとっても「どこに出店するか」が変わってくる
加盟店側にも同じことが言えます。以前なら複数のデリバリーサービスへ出店し、それぞれから注文を獲得する戦略が取れました。しかしサービスが減れば、残ったプラットフォームへの依存度が高くなります。
一方で複数サービスを管理する、タブレット・メニュー・価格・注文・契約などの負担は減ります。さらに注文が上位サービスへ集中すれば、1サービスあたりの注文量は増える可能性があります。
つまり業界再編は、ユーザー・配達員・加盟店の全員にメリットとデメリットがあります。
ユーザーにとって今はむしろ「安くなっている」
少し皮肉なのがここです。企業側では撤退が続いている一方、ユーザー側から見ると、2026年のフードデリバリーはむしろ以前より安くなっています。
Uber Eatsはお店と同じ価格。出前館はお店価格+送料無料。Rocket Nowは送料・サービス料無料。各社が利用者を奪い合っているためです。
つまり現在は、企業にとっては厳しい競争
である一方、
ユーザーにとっては非常にお得な競争
でもあります。しかし、この価格競争が永遠に続くとは限りません。
競合が減った後、価格はどうなる?
ここは今後かなり重要です。競合が多い間は、クーポン・送料無料・店頭価格・サービス料無料などを競います。しかし市場が数社へ集約された後も、同じ価格競争が続くとは限りません。
もし将来的に、Uber Eats・出前館・Rocket Nowの3社程度へ市場が集中し、その中でもさらに順位が明確になれば、「ユーザー獲得のために赤字覚悟で値下げする必要性」が低下する可能性があります。
そうなれば、送料・サービス料・サブスクリプション・加盟店手数料・配達報酬などの設計が変化する可能性があります。もちろん現時点で各社が値上げすると決まったわけではありません。しかし寡占化が進んだ後に何が起きるかは、ユーザー・加盟店・配達員の全員が注目すべきポイントでしょう。
フードデリバリーの戦いは「料理を届ける」だけではなくなった
もう一つ見逃せない変化があります。現在の主要プレイヤーは、単純に飲食店の料理だけを運んでいるわけではありません。コンビニ。スーパー。日用品。小売。クイックコマース。様々な商品へ配送対象を広げています。
Uber Eatsは「生活インフラ」を目指すと明言。Rocket Nowもローソンとの連携を開始。出前館も「食のラストワンマイル」を支えるライフインフラを掲げています。
つまり今後の勝負は、「どのフードデリバリーアプリが勝つか」だけではありません。
「誰が日本のラストワンマイルを握るのか」
という競争へ変わっていく可能性があります。
Wolt・menu撤退から見えてくる本当の変化
Woltとmenuの撤退だけを見ると、「またフードデリバリーが一つなくなった」というニュースです。しかし過去まで遡ってみると、foodpanda・DiDi Food・DoorDashブランド・Wolt・menuと、何度も市場が整理されてきました。
その一方で市場規模はコロナ前の約2倍。そしてRocket Nowという新しいプレイヤーが急成長しています。これは、フードデリバリーというサービス自体が衰退しているというより、その市場を誰が支配するのかが入れ替わっていると考えた方が現状に近いでしょう。
2026年は日本フードデリバリー「第二次再編」の年になるかもしれない
2026年の動きを改めて並べてみます。
- 2月25日 — Woltが日本撤退を発表
- 3月1日 — 出前館が「お店価格」を全国展開し、送料無料を開始
- 3月4日 — Woltが日本でのサービスを終了
- 3月20日 — Uber Eatsが全国約1万8,000店舗で「お店と同じ価格」を開始
- 6月 — 出前館のお店価格が2万1,000店舗を突破。Rocket Nowが700万ダウンロードを突破
- 8月7日 — Rocket Nowが46都道府県・420都市へ拡大
- 8月14日 — Rocket Nowがローソンとの連携を発表
- 8月19日 — menuがサービス終了を発表
- 9月30日 — menu終了予定
たった7か月ほどの間にこれだけのことが起きています。2026年は後から振り返ったとき、「日本のフードデリバリー業界の勢力図が大きく変わった年」として記憶されるかもしれません。
まとめ:フードデリバリーは終わっていない。「生き残れる会社」が減っている
Woltが撤退。menuも撤退。これだけを見ると、「日本のフードデリバリー市場はもうダメなのでは?」と思うかもしれません。
しかし市場規模は2025年時点で、
8,240億円
コロナ前比、
+97%
需要は残っています。
そしてその市場をめぐって、Uber Eatsは3年連続黒字を公表し、「お店と同じ価格」を拡大。出前館は「お店価格+送料無料」で注文量を増やそうとしています。Rocket Nowは参入から約18か月で700万ダウンロード、46都道府県・420都市まで拡大。
つまり、フードデリバリーが消えているのではありません。むしろ、
巨大な市場を少数のサービスが奪い合う段階へ移っている
ように見えます。
過去にはfoodpandaやDiDi Foodが撤退。DoorDashブランドはWoltへ統合。そして、そのWoltも2026年に撤退。menuも終了します。
共通して見えてくるのは、規模・注文密度・配達員確保・価格競争・投資余力、そして「この市場へ経営資源を投入し続ける価値があるのか」という経営判断です。
だから今回のWolt・menu撤退を、「コロナブームが終わったから」だけで片付けると、本質を見失います。むしろ2026年に起きているのは、フードデリバリー市場の衰退ではなく、寡占化に向けた本格的な再編なのかもしれません。
そして次に重要なのは、残ったプレイヤーの中で誰が最も強いのか。Uber Eats。出前館。Rocket Now。規模、収益性、価格、配達員ネットワーク、資金力、成長速度。それぞれには明確な強みと弱みがあります。
次の記事では、この3社を同じ基準で比較し、menu撤退後の日本市場で最後に生き残るのは誰なのかを分析します。
→【次の記事】Uber Eats・出前館・Rocket Now、最後に生き残るのは?menu撤退後の勢力図を徹底分析
→【関連記事】menuはなぜ撤退したのか?市場規模8,240億円でも生き残れなかった理由を徹底分析
→【関連記事】menu撤退で配達員はどうなる?Uber Eats・出前館・Rocket Nowへの影響を徹底分析
→【関連記事】menuサービス終了の日程・利用者・加盟店への影響はこちら
参考情報・出典
本記事は2026年8月20日時点で公開されている情報をもとに作成しています。
主な参照情報:
- KDDI「フードデリバリーサービス『menu』の提供終了およびmenu株式会社の解散・清算について」
- Wolt「Woltの日本におけるサービスの終了について」
- DoorDash「DoorDash to Wind Down Deliveroo and Wolt Operations in Four Countries」
- DoorDash・Woltの2022年統合関連発表
- foodpanda日本撤退関連発表・報道
- DiDi Food日本サービス終了関連発表・報道
- サカーナ・ジャパン(Circana Japan)「2025年のデリバリー市場規模」
- Uber Eats Japan「お店と同じ価格」関連発表
- 出前館「お店価格で出前館」「送料無料」関連発表
- CP One Japan「Rocket Now」700万ダウンロード・サービスエリア拡大関連発表
- CP One Japan・ローソン連携関連発表
なお、本記事では各社が公式に発表している撤退理由と、公開されている市場データから行う分析を区別しています。「寡占化」「第二次再編」「Winner takes most」などは、特定企業が公式に表明したものではなく、これらの公開情報をもとにした本記事の分析です。




