2026年8月19日、KDDIはフードデリバリーサービス「menu」を2026年9月30日で終了すると発表しました。サービス終了後には運営会社のmenu株式会社そのものも解散・清算される予定です。
ここで一つ、大きな疑問があります。なぜmenuは撤退することになったのでしょうか。
「コロナ禍が終わって、フードデリバリーを利用する人が減ったから」——そう考える人もいるかもしれません。しかし、市場データを調べてみると少し意外な事実が見えてきます。
日本のデリバリー市場は、コロナ前の約2倍の規模を維持しているのです。2025年の市場規模は8,240億円。前年比でも2.0%増加しています。
つまり、「市場そのものがなくなったからmenuが撤退した」という単純な話ではありません。
さらにmenuは、一時は全国47都道府県へ進出し、加盟店数は8万7,000店まで拡大。KDDIも出資し、2023年には本気で「国内市場トップ」を目指すと発表していました。それほどのサービスが、なぜわずか数年後に会社ごと清算されることになったのでしょうか。
menuの歴史、Uber Eats、出前館、Rocket Now(ロケットナウ)の現在、各社の価格競争、そしてフードデリバリーというビジネス特有の構造まで調べていくと、今回の撤退の背景がかなり見えてきます。この記事では、公開されているデータをもとにmenu撤退の理由を徹底的に分析します。
※menuサービス終了の日程や利用者・加盟店への影響については、こちらの記事で詳しくまとめています。
→【関連記事】menuが2026年9月30日でサービス終了へ|撤退理由・配達員・利用者への影響を徹底解説
まず結論:menu撤退は「市場縮小」だけでは説明できない
最初に、この記事での分析結果をまとめます。menu撤退の背景には、一つだけではなく複数の要因が重なったと考えられます。特に重要なのは、
- Uber Eatsを中心とした上位サービスとの規模の差
- Rocket Nowという資金力のある新規プレイヤーの急成長
- 「送料無料」「お店と同じ価格」をめぐる価格競争
- フードデリバリー特有の注文密度とネットワーク効果
- 配達員・ユーザー・加盟店を同時に確保する必要がある難しさ
- KDDIがmenuへの投資を続ける合理性
です。
もちろん、menuは非上場企業であり、menu単体の詳細な最新業績は公開されていません。そのため、「menuは○○億円の赤字だったから撤退した」などと断定することはできません。
KDDIが公式に説明しているのは、「フードデリバリー市場を取り巻く競争環境の変化や今後の事業見通しを総合的に検討した結果、経営資源の最適配分の観点からサービス終了を判断した」ということです。本記事では、この「競争環境の変化」とは具体的に何だったのかを、公開情報から考えていきます。
そもそもmenuは決して小さなサービスではなかった
現在のmenuだけを見ると、Uber Eatsや出前館に比べて小規模なサービスという印象を持っている人もいるかもしれません。しかし、menuは一時期かなり積極的に事業を拡大していました。
menuがフードデリバリーを開始したのは2020年4月。そして、わずか約1年後となる2021年4月には、全国47都道府県へのデリバリー展開を達成しています。当時の加盟店舗数は約5万3,000店。さらに2021年6月には6万店、2022年5月には、8万7,000店まで加盟店を拡大しました。かなりのスピードです。
menuはフードデリバリーだけでなく、コンビニやスーパーなどの商品を届ける「クイックコマース」への展開も進めていました。
KDDIも本気でmenuを成長させようとしていた
menuの歴史を考えるうえで欠かせないのがKDDIです。KDDIとmenuは2021年6月に資本業務提携を開始しました。その後KDDIは追加出資。au PAYとの連携や、auスマートパスプレミアム会員向けのmenu配達料無料特典など、KDDIの巨大な顧客基盤をmenuへつなげる施策が実施されました。
さらに2023年4月。KDDI、レアゾン・ホールディングス、menuの3社は資本業務提携をさらに強化します。menuの株式保有比率は、
- KDDI:50.6%
- レアゾン・ホールディングス:49.4%
となりました。そして、このとき発表された目標が非常に重要です。
「国内市場トップのデリバリーサービス」
単にmenuを細々と維持するという話ではありません。KDDIの通信サービスやau・UQ mobileなどの会員基盤、データマーケティング、Ponta、au PAYなどを活用し、menuを本格的に成長させようとしていました。2023年時点では、menuを「ラストワンマイル」のプラットフォームへ進化させるという構想までありました。
ところが、それから約3年。2026年8月19日。KDDIはmenuのサービス終了と、menu株式会社の解散・清算を発表します。「国内トップを目指す」から「会社ごと清算」へ。わずか数年間で戦略が180度変わったことになります。
menu撤退は「フードデリバリー市場が縮小したから」なのか?
ここからが今回の最大のポイントです。コロナ禍ではフードデリバリー市場が急成長しました。その後、外出や外食が戻ったことで、「フードデリバリーブームは終わった」という印象を持っている人も多いでしょう。
ところが実際の市場規模を見ると、少し違った景色が見えてきます。サカーナ・ジャパン(Circana Japan)の調査によると、2025年のデリバリー市場規模は、
8,240億円
と推計されています。前年から、
2.0%増
さらにコロナ前の2019年と比較すると、
97.0%増
です。つまり、ほぼ2倍。確かにコロナ禍の異常な成長期とは状況が違います。しかし、フードデリバリーという市場そのものが消えているわけではありません。むしろ8,000億円を超える巨大市場が残っています。ここが今回のmenu撤退を理解するうえで非常に重要です。
市場があるのに企業が撤退する――本当の問題は「競争」なのかもしれない
市場規模が8,000億円以上ある。それでも企業が撤退する。一見すると不思議です。しかし、「市場が大きいこと」と「すべての企業が儲かること」は全く別です。
例えば100億円の市場を10社で均等に分けられるなら、1社あたり10億円です。しかし1位の会社が60億円、2位が25億円、残り8社で15億円を奪い合う市場ならどうでしょう。市場全体は大きくても、下位企業は非常に苦しくなります。
フードデリバリーは、まさにこの「規模」が極めて重要なビジネスです。そして現在の日本では、Uber Eats、出前館、そして急成長するRocket Nowとの競争が激しくなっています。
Uber Eatsは「規模」だけでなく黒字化している
menuにとって最大の壁の一つがUber Eatsです。Uber Eats Japanによると、2026年3月時点で、
- 加盟店:約12万店舗
- 配達パートナー:全国約10万人
というネットワークを構築しています。さらに重要なのが収益性です。Uber Eats Japanは、2023年~2025年の3年間連続で黒字を達成したと発表しています。さらに2026年1月には過去最高売上を記録したとしています。
つまりUber Eatsは、規模が大きいだけではなく、日本市場で黒字化まで実現していることになります。これは競合にとって非常に大きな壁です。
そしてUber Eatsまで「お店と同じ価格」へ
さらに2026年、Uber Eatsは価格面でも大きく動きました。2026年3月20日から全国約1万8,000店舗で、「お店と同じ価格」を開始。Uber Eats上の商品価格を実店舗と同じ価格にする取り組みです。
さらにUber Oneでは、条件を満たす注文について、配達手数料0円に加え、サービス料0円となる特典も展開しています。
以前のフードデリバリーは、「多少高くても、自宅まで届けてもらえる便利さにお金を払う」サービスでした。しかし現在は、
- 「デリバリーなのに店頭と同じ価格」
- 「送料も無料」
- 「サービス料も無料」
という競争へ向かっています。ユーザーにとっては歓迎すべき競争です。しかし運営会社側からすると、収益を確保する難易度は上がります。
出前館も「お店価格+送料無料」で対抗
価格競争に参加しているのはUber Eatsだけではありません。出前館も2026年3月1日から、「お店価格で出前館」を全国47都道府県へ拡大しました。開始時点で対象は1万店舗以上。それからわずか3か月後の6月1日には、2万1,000店舗以上まで増加。そのうち1万6,000店舗以上では、すべての商品を店頭と同じ価格で注文できるとしています。
さらに出前館は、送料無料も実施しています。つまり2026年の日本では、
- Uber Eats → お店と同じ価格
- 出前館 → お店価格+送料無料
- Rocket Now → 送料・サービス料無料
という猛烈な価格競争が起きています。
しかし出前館の数字を見ると、この競争の厳しさが分かる
ここで非常に興味深い数字があります。出前館の2026年8月期第3四半期累計では、
- 売上高:約282.9億円
- 営業損失:約63.7億円
となっています。さらに出前館は2026年7月、通期業績予想を下方修正。2026年8月期の営業損失予想は、79億円
です。会社側は、オーダー数やGMV(流通取引総額)が期初想定を下回る見込みであることなどを理由として挙げています。
ここから見えてくるのは、大手の出前館でさえ、巨額の損失を出しながら競争しているという現実です。これはmenu撤退を考えるうえでかなり重要な材料でしょう。
そこへ突然現れたRocket Now
そして2025年、日本市場に新しいプレイヤーが現れました。Rocket Now(ロケットナウ)です。Rocket Nowは韓国Coupang系のCP One Japanが運営するフードデリバリーサービス。2025年1月に日本でサービスを開始しました。
最大の特徴は、送料0円・サービス料0円
という分かりやすい料金体系です。そして、その成長スピードが非常に速い。2026年6月には、累計700万ダウンロードを達成。さらに2026年8月9日時点でサービスエリアは、
- 46都道府県
- 420都市
まで拡大しています。2025年1月に日本へ登場したサービスが、約1年半でほぼ全国規模まで拡大したことになります。
Rocket Nowは2025年のアプリDL数でUber Eatsを上回った
Sensor Towerのデータを見ると、その勢いがさらに分かります。2025年1月~10月の日本におけるフードデリバリーアプリのダウンロード数では、Rocket Nowが220万ダウンロード以上を記録。Uber Eatsの200万以上を上回り、同期間のダウンロード数トップとなりました。
ただし、ここは誤解しないよう注意が必要です。ダウンロード数1位=市場シェア1位ではありません。月間アクティブユーザー数(MAU)では、依然としてUber Eatsが安定してトップです。
つまり現在のRocket Nowは、Uber Eatsを抜いたというより、猛烈な速度で追いかけている新規プレイヤーと見るのが適切でしょう。
menuにとってRocket Now参入はかなり厳しかった可能性がある
ここからは公開情報をもとにした分析です。menuからすると、Uber Eatsと出前館だけでも強力な競合です。そこへ、
- 送料・サービス料無料を掲げ
- 大量の広告を投入し
- 全国へ猛烈な勢いでエリアを広げるRocket Nowが登場
Sensor Towerによれば、2025年1~10月のRocket Nowのダウンロードのうち、有料ディスプレイ広告が34%、有料検索が17%。合わせて半分以上が有料広告経由でした。つまりRocket Nowは、かなり積極的に資金を投じてユーザーを獲得していることがうかがえます。既存サービスからすると非常に厄介です。
なぜならユーザーだけではなく、加盟店、そして配達員も同時に奪い合うことになるからです。
フードデリバリー最大のポイント「注文密度」
ここまで価格競争について見てきました。しかし、menu撤退を考えるうえで、それ以上に重要かもしれないのが、
注文密度
です。フードデリバリーは単純な通販とは違います。料理を注文したら、短時間で誰かが店へ行き、料理を受け取り、ユーザーへ届けなければなりません。
例えば同じ大阪市内で、1時間に、Uber Eats:100件、menu:10件の注文が発生していると仮定してみます。Uber Eatsでは注文が大量にあるため、
- 店で商品を受け取る
- ユーザーへ届ける
- 近くの別店舗から次の注文を受ける
という流れを作りやすくなります。一方、注文数が少ないサービスでは、配達終了 → 次の注文がない → 待機、となる可能性が高くなります。
配達員は「注文が鳴るサービス」へ移動する
これは配達員にとって非常に重要です。同じ1時間オンラインにするなら、5件配達できるアプリと、1件しか鳴らないアプリのどちらを選ぶでしょうか。当然、多くの配達員は注文が多いサービスを優先します。
すると注文が少ないプラットフォームは、配達員を確保するために、
- 1件あたりの報酬を高くする
- インセンティブを出す
などの施策が必要になります。しかし、それにはお金がかかります。逆に報酬を抑えると、
- 配達員が減る
- 配達に時間がかかる
- ユーザー体験が悪化する
- ユーザーが減る
- 注文が減る
- さらに配達員が減る
という悪循環に陥る可能性があります。
逆に注文が多いサービスはさらに強くなる
注文密度が高いサービスでは逆のことが起こります。
- 注文が多い
- 配達員が集まる
- マッチングしやすくなる
- 配達時間が短くなる
- ユーザーが使いやすくなる
- 加盟店にも注文が入る
- 加盟店が増える
- さらにユーザーが増える
- さらに注文が増える
という好循環です。これが、ネットワーク効果です。
フードデリバリーでは、ユーザー・加盟店・配達員という3者が同時に存在する必要があります。どれか一つだけ増やせばいいわけではありません。ここが非常に難しいところです。
「全国展開している」だけでは勝てない理由
menuは2021年に全国47都道府県への展開を達成しました。しかし、エリアが広いことと、その地域で注文密度が高いことは別です。大阪でアプリが利用できる。東京でも利用できる。北海道でも利用できる。それだけでは十分ではありません。
重要なのは、「その地域、その時間、その数km圏内で何件の注文が発生しているか」です。
配達員目線で言えば、「対応エリアかどうか」ではなく、「オンラインにしたら鳴るかどうか」の方が重要です。ユーザー目線でも、「アプリが利用できるか」ではなく、「注文したらすぐ配達員が見つかるか」が重要です。全国展開だけでは解決できない問題がここにあります。
menuにはKDDIという巨大な後ろ盾があった。それでも撤退した
ここで再びKDDIの存在が重要になります。KDDIには、au、UQ mobile、au PAY、Ponta、Pontaパス、ローソンなど巨大な顧客接点があります。実際menuでも、Pontaパス会員向けに配達料無料などの強力な特典を提供してきました。
さらに2026年3月には、「ローソンデリバリー powered by menu」もスタート。menuの配送ネットワークを活用した新しい取り組みまで始めていました。
つまりmenuは、「資本力のない小さなスタートアップが競争に負けた」という単純なケースではありません。KDDIという巨大企業の支援がありながら、それでもサービス終了という判断に至っています。だからこそ今回の撤退は、日本のフードデリバリー市場の厳しさを象徴しているように見えます。
KDDIにとって「menuを持ち続ける意味」が変わった可能性
ここからはKDDIの公式発表と周辺状況からの分析です。KDDIはmenu撤退の理由として、「経営資源の最適配分」を挙げています。企業には使える人材も資金も無限にあるわけではありません。
menuへ追加投資するということは、その資金を別の事業には使えないということです。そしてKDDIグループには現在、通信、金融、DX、AI、データセンター、ローソン・Ponta経済圏など、多数の成長領域があります。
フードデリバリー市場でUber Eatsや出前館、Rocket Nowと価格競争を続けるためにmenuへ追加投資するのか。それとも他の成長事業へ経営資源を振り向けるのか。KDDIは後者を選んだ、と見ることができます。
もちろんKDDIはmenu単体の詳細な採算を公開していないため、これ以上を断定することはできません。しかし「経営資源の最適配分」という公式説明は、この判断を考えるうえで非常に重要です。
そして2026年にはWoltも日本から撤退した
menuだけなら、「menu固有の問題だった」と考えることもできます。しかし2026年には、もう一つ大きな撤退がありました。Woltです。Woltは2026年2月25日に日本でのサービス終了を発表し、3月4日に日本市場から撤退しました。そして約半年後、menuも撤退を発表。一方でRocket Nowは全国へ急拡大しています。
つまり現在の日本市場では、企業が次々参入する時代から、勝ち残るサービスが絞られる時代へ移行している可能性があります。
→【関連記事】Woltに続きmenuも撤退。日本のフードデリバリー業界で何が起きているのか?
2026年のフードデリバリー業界を並べると異変がよく分かる
ここまでの動きを時系列で並べてみます。
- 2025年1月 — Rocket Nowが日本市場へ参入
- 2025年 — Rocket Nowが急速にユーザーを獲得
- 2026年2月25日 — Woltが日本撤退を発表
- 2026年3月1日 — 出前館が「お店価格」を全国展開。送料無料も開始
- 2026年3月4日 — Woltが日本でのサービスを終了
- 2026年3月20日 — Uber Eatsが全国約1万8,000店舗で「お店と同じ価格」を開始
- 2026年6月 — Rocket Nowが累計700万ダウンロードを達成
- 2026年8月9日 — Rocket Nowが46都道府県・420都市へ拡大
- 2026年8月19日 — menuがサービス終了を発表
- 2026年9月30日 — menuサービス終了予定
こうして並べると、2026年が日本のフードデリバリー業界にとってかなり大きな転換点であることが分かります。
menuが「弱かったから撤退」で片付けると本質を見失う
もちろん最終的にmenuが競争を続けられなくなったという意味では、競争に敗れたと表現することもできます。しかし、「menuが人気なかったから終わった」だけでは今回の出来事を十分に説明できません。
2022年には8万7,000店舗。全国47都道府県へ展開。KDDIが出資。Pontaやau PAYと連携。ローソンとも連携。それでも撤退です。
一方では、出前館が数十億円規模の営業赤字を出しながら価格競争を続けています。そしてRocket Nowという新規プレイヤーが大量のユーザー獲得施策を展開しています。Uber Eatsはすでに巨大な注文・加盟店・配達員ネットワークを構築し、黒字化しています。
こうした状況を見ると、現在のフードデリバリー市場では、「ある程度人気のサービス」では足りず、「圧倒的な規模まで到達すること」がますます重要になっているように見えます。
フードデリバリーは「Winner takes most」に近づいているのか
この構造を考えると、今後日本のフードデリバリー市場は、Winner takes most——つまり「勝者が市場の多くを取る」構造へ近づいていく可能性があります。
1社だけが完全独占する必要はありません。しかし、1位・2位・3位くらいまでに注文が集中し、4位以下が十分な注文密度を確保できなくなる。すると下位サービスほど配達効率が悪化し、ユーザー獲得や配達員確保により多くのお金が必要になります。
そして最終的に、「市場規模は大きいのに、参加できる企業数は減っていく」という現象が起きます。menu撤退は、その一例なのかもしれません。
menu撤退で最も得をするのはどこか?
では、menuがなくなったあと、その需要はどこへ向かうのでしょうか。候補は主に、Uber Eats、出前館、Rocket Nowです。
ここで重要なのは、menuから移動するのがユーザーだけではないことです。利用者、加盟店、配達員の3者が移動します。
Uber Eatsはすでに巨大なネットワークを持っています。Rocket Nowは猛烈に成長しています。出前館も全国規模のサービスと知名度があります。menu撤退後、この3者をどのサービスが最も取り込むのか。これが次の競争になります。
→【関連記事】Uber Eats・出前館・Rocket Now、最後に生き残るのは?menu撤退後の勢力図を分析
配達員にとってmenu撤退は何を意味する?
そしてデリログとして特に注目したいのが配達員への影響です。menuで稼働していた配達員が、Uber Eats、出前館、Rocket Nowへ流れる可能性があります。
単純に考えると、配達員が増えれば1人あたりの案件は減ります。しかしmenuを利用していたユーザーも同時に他社へ移ります。つまり、
- 配達員の供給増
- 注文需要の増加
が同時に起こります。どちらが大きくなるのかは、地域によってかなり違う可能性があります。特に東京・大阪などmenuの注文が一定数存在していた都市部では、menu終了前後で各アプリの「鳴り」に変化が出る可能性があります。
この部分については、配達員目線に絞って別の記事で詳しく分析しています。
→【関連記事】menu撤退で配達員はどうなる?Uber Eats・出前館・Rocket Nowへの影響を分析
結論:menuが撤退したのは「市場がなくなったから」ではない
menu撤退について調べていくと、非常に興味深い構図が見えてきます。日本のデリバリー市場は2025年時点で、8,240億円。コロナ前の2019年と比較すると、97%増。つまり約2倍です。需要そのものは残っています。
それでも、Woltが撤退。menuも撤退。なぜでしょうか。その答えは、「市場がない」のではなく、「巨大な市場で勝ち残るために必要な規模が大きくなりすぎた」ことにあるのかもしれません。
Uber Eatsは約12万店舗・約10万人の配達パートナーを抱え、日本で3年連続黒字。出前館は79億円の営業赤字予想を抱えながら「お店価格」「送料無料」で戦っています。Rocket Nowは参入から約1年半で700万ダウンロード、46都道府県・420都市へ拡大。
そんな市場でmenuが競争を続けるためには、ユーザーを増やす。加盟店を増やす。配達員を確保する。価格を下げる。広告を出す。インセンティブを出す。そして各地域で十分な注文密度を作る。これらを同時に続けなければなりません。
KDDIはその競争へさらに経営資源を投入するより、menuを終了することを選びました。だから今回のmenu撤退を、「フードデリバリーの需要がなくなった」と捉えるのは少し違うと思います。むしろ逆です。
8,000億円を超える巨大市場をめぐる競争が、上位数社しか生き残れないほど激しくなってきた。今回のmenu撤退は、日本のフードデリバリー市場が「成長期」から、本格的な淘汰・再編の段階へ入ったことを示す出来事なのかもしれません。
そして次に見るべきなのは、menuが抜けた場所を誰が取るのか。Uber Eatsなのか。出前館なのか。それとも急成長するRocket Nowなのか。2026年後半、日本のフードデリバリー業界の勢力図はさらに大きく変わる可能性があります。
→【次の記事】menu撤退で配達員はどうなる?Uber Eats・出前館・Rocket Nowへの影響を分析
→【関連記事】Woltに続きmenuも撤退。日本のフードデリバリー業界で何が起きているのか?
→【関連記事】menuサービス終了の詳細・終了日・利用者への影響はこちら
参考情報・出典
本記事は2026年8月20日時点で公開されている情報をもとに作成しています。
主な参照情報:
- KDDI「フードデリバリーサービス『menu』の提供終了およびmenu株式会社の解散・清算について」
- KDDI・レアゾン・menu「国内トップのデリバリーサービス実現に向け提携強化」
- KDDI「menuとKDDI、auスマートパスプレミアムで何度でも『配達料無料』」
- menu「全国47都道府県へデリバリー配達エリア展開を達成」
- サカーナ・ジャパン(Circana Japan)「2025年のデリバリー市場規模」
- Uber Eats Japan「お店と同じ価格」
- 出前館「お店価格で出前館」「送料無料」
- 出前館 2026年8月期第3四半期決算関連資料
- Rocket Now公式発表
- Sensor Tower「日本のフードデリバリーアプリ」調査
なお、menu株式会社は非上場企業であり、menu単体の最新の売上高・GMV・営業損益・注文数などについて確認できる詳細な公開情報には限りがあります。そのため本記事では、確認できない数値を推測して撤退理由として断定せず、KDDIの公式説明および公開されている市場・競合データをもとに分析しています。




